ことり 小川洋子

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読書感想文

読んだきっかけ

今村夏子さんの敬愛する作家だと知り、初めて小川洋子さんの作品を読みました。

ざっくりどんな話?

小鳥を愛し小鳥の言葉を話す事が出来るけれど、人間の言葉は話さなくなってしまった兄と、兄と共に生き、ただ一人兄の言葉を理解する弟の物語。

文章が美しい

何しろ美しくふくよかな文章で、まるで音楽が聴こえてくるかの様な心地良さでした。

変化を嫌い、毎日規則正しく暮らすお兄さんと、お兄さんを支える弟の暮らしぶりは平和で微笑ましくずっと読んでいたいと思いました。

後に何故弟が“小鳥の小父さん”と呼ばれるのか理由が分かる物語へと移りますが、その人生もまた淡々としている中に垣間見える人間関係、小鳥の小父さんの不器用で、静かな生活に少しずつドラマが生まれていく様に引き込まれました。

コミュニケーションって?

主人公の小鳥の小父さんと、小鳥との繋がりはとても羨ましくなるほどで、完璧な信頼関係にあるように思います。
小鳥の小父さんが一人暮らしになってから、その生活に人間が入ってくると、小父さんの完璧な生活に乱れが生じる。
皮肉なものだなと思いました。小父さんは人間よりも、小鳥とのコミュニケーションの方が上手く図れるし、心も乱されないで済む。人間同士は言葉を交わすことができるからコミュニケーションを図れるかというとそうではない。コミュニケーション、繋がり、信頼って何なんだろうと考えました。

物語後半で、それぞれ偏愛性の強いおじさんたちが登場しますが、愛情のかけ方や優しさについて考えました。何かを愛でるという行為は、ともすれば自己満足だったり身勝手な側面が強い部分があるのだと思います。

多くを求めない美しさ

”PERFECT DAYS”の平山さんのように、毎日規則正しく、多くを求めない生活が”ことり”の中にもあります。美しくてシンプルで完璧な生活のように感じました。
ただ、その完璧な生活はいつでも壊れてしまう可能性がある。人生って色々あるんだよなって思います。小父さんにとっての幸せを考えていたら、自分自身の幸せについても重ね合わせて考えていました。

コメント

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