作品を観たきっかけ
カウリスマキ監督の最新作”枯葉”を観るために、久しぶりに他の作品を観ようと思い、もう一度観ました。
ざっくりどんな話?
主人公の男性が暴漢に襲われて記憶喪失になりますが、貧しい一家に助けて貰います。救世軍の炊き出しを受け、救世軍に所属するイルマに恋をして、バイトもしたり、徐々に主人公の生活も軌道に乗ります。職安で銀行口座を開くように言われ、銀行へ行くと銀行強盗に巻き込まれて・・・。
独特なカウリスマキ監督の世界観
大好きな監督のうちの一人です。独特の世界観が好きなんです。登場人物は無表情でどこかとぼけている。凄く悲劇的なのに笑えてしまう。映像を見るとすぐにカウリスマキ監督だ!と分かります。
一番最初に観たのは「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」で、今から20年以上前でしょうか?当時まだ18歳くらいの私は、独特過ぎる雰囲気に圧倒されました。渋谷ユーロスペースで、無表情で淡々とした登場人物に笑っていいのか悩んだ記憶があります。笑
暗い劇場内で周りの人の反応を見ましたがわかるはずもなく。懐かしい。
カンヌ受賞作品です
グランプリとカティ・オウティネンさんが女優賞を受賞しています。
私は高校生の頃から、カンヌ映画祭には信頼を置いていて、ヨーロッパの知らない監督の作品を観る基準にもしていました。なので、もしカウリスマキ監督をご存じなくても、観てみようかなっていう気持ちになってくれると嬉しいです。
ジャガイモの意味は?
2002年公開当時に観た印象は若かったせいか、今よりも深刻に捉えて悲劇的に感じていました。20年以上経ってもう一度観た印象は全然違って、笑ってしまう場面がいくつもありました。明らかに優しそうな雌犬の名前がハンニバルって。笑
人間は変化するものだと「バカの壁」で読みましたが、本当にそう思います。
年齢を経たから生じる感じ方の変化もそうですし、その時に置かれている自分の状況でも、映画の意味をどう捉えるかが変わるものだというのを改めて感じました。
この映画で鮮明に覚えていたのは主人公がジャガイモを植える場面でした。当時は貧しさの象徴のように感じましたが、今回は希望を意味しているように感じたので、意味が真逆です。
また次の20年後に観る時はどう感じるのでしょうか。楽しみです。
ムード歌謡が良い。クレイジーケンバンドの曲が聴ける
劇中の救世軍バンドの演奏シーンもしみじみ良いのです。ムード歌謡の必要性が分かった気がします。ジュークボックスで音楽を聴く場面もそうですし、音楽が印象的に使われています。
その中でも、主人公が電車でお寿司を食べる場面がありますが、そこで流れている曲が日本語なので”あれ?”となりました。
「ハワイ~ハワイ~」と歌の上手い日本人が歌っています。
調べてみたら、クレイジーケンバンドのギタリスト、小野瀬 雅生さんがカウリスマキのファンでアルバムが出るたびにカウリスマキ監督に送っていたそうです。カウリスマキ監督もクレイジーケンバンドのファンだと公言しているそうですよ。
希望と悲劇が混在している
主人公が殴られて、会社経営者が破綻して、国全体も貧しくて、悲劇的要素がちりばめられている中に、楽しみを見出したり、誰かに恋をしたり希望的要素もある。
それって人生の縮図です。
ネタばれになりますが、主人公は記憶をなくす前はあんまり良い人間ではなかったけれど、記憶をなくしたことで得たものがいくつもあって、結果人生は良い方向に向かって行く。
良い映画は哲学を内包している
自分の人生でも、多面的に見られるように意識していれば、何か嫌なことが起きても別の面から見たら学びがあるように感じられるのかもしれません。
私の中で、素晴らしい映画は哲学的要素を含んでいるものが多いのですが、この映画もその一つだと思っています。
新作「枯葉」が楽しみ!
久しぶりに観たカウリスマキ作品はやっぱり面白かった。新作「枯葉」は下高井戸シネマに観に行く予定です!レニングラード・カウボーイズの曲も聴きたくなりました。他の作品も観なくちゃ!
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