黄色い家 川上未映子

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どんな人におススメ?

ポン子
ポン子
  • ハラハラする小説を読みたい人
  • 美しい表現の文章が好きな人
  • 純文学が好きな人
  • 小説から生きるヒントを貰いたいと思っている人だよ!

どんな本?作者の経歴は?

読売文学賞(小説賞)、王様のブランチBOOK大賞2023受賞、その他多数ノミネートもされています。

川上未映子さんは、弟さんを大学に入学させるために昼間は本屋でバイト、夜はホステスとして働いていた過去があったり、2002年には歌手デビューをされています。
芥川賞、中原中也賞、谷崎潤一郎賞、紫式部文学賞、などなど、沢山の受賞歴もあり、2024年からは芥川賞の選考委員も務めています。
「ヘヴン」はブッカー賞の最終候補にまでなっていて、過去の著作も翻訳多数で世界的作家と言っても全然過言ではないですね。凄い!

ざっくりどんな話?

物語は主人公・花が小さなネット記事を見つけるところから始まります。20年前に友人二人と共に同居生活を送った黄美子が20代女性を監禁し、傷害の罪に問われ逮捕されたという内容でした。
同居当初、40代の黄美子と未成年の花たちは生きていくために何をしたのか。
金とは何か、生きるとは何か、悪とは何か、必死に生きた花を巡る物語です。

感受性が半端ない

作家は感受性が強くなくてはできない職業だと思いますが、川上未映子さんはその中でも群を抜いて瞬間瞬間の気持ちの表現ができる人だなと思います。
季節の空気を色や手触り、匂いに例えて表現する文章は、目の前にその光景が浮かぶようで類稀な美しさだと思います。
そして人間の感情もつぶさに表現できる文章。

季節はどこで決まるのだろう。何が作るのだろう。花とか葉っぱとか風とかだろうか。人間は関係ないのだろうか。何歳でも、どこであっても、それがその季節であるのなら同じ匂いがするのだろうか。

10年以上前に「ヘヴン」を読んだ時にもその表現力に唸りましたが、その当時は若さの瑞々しさを感じました。
今回は円熟味を増して、文章に説得力も加わったように感じました。私が若かった頃に感じた理不尽な気持ちや、人間が与える力の存在を所々で表現されていて、救われる気持ちになりました。
人は人を傷つけ、損ないもするけれど、人が人を救うのも事実。言葉だったり音楽だったり。確実にあるその強い力を、久しぶりに感じました。

90年代後半の時代感と金の力

時代設定が90年代後半なので、ポケベルだったり、カラオケの選曲に「想い出がいっぱい」だったり、X JAPANだったり、その時代に生きる10代後半女子の気持ち、青春のキラキラした美しさ、楽しさは、彼女たちが手を染める闇と対照的に表現されて、永遠には続かない光の儚さに切なくなりました。
X JAPANのHIDEが亡くなった当時のことも描かれていますが、嘆くファンたちの描写、それを見た花の気持ちの描写は、X JAPANのファンでなくとも心が震え、同時に当時の光景がありありと目の前に浮かび、タイムスリップ感すらありました。

青春を享受している間は金とのバランスが取れていて、金の存在すら意識することはないけれど、金の割合が多くなった時に人生のバランスはあっという間に崩れてしまう。主人公の花は、金という存在の強さを嫌というほど思い知ります。この辺りのリアルさは、川上未映子さんが送ってきた人生に由来しているのかと想像します。

少女の危うさと希望

人生の不安定さは、金があれば解決できると花は妄信して突き進みます。金は彼女の希望足り得るのでしょうか。
一方で黄美子さんという中年女性の存在は、花にとってずっと希望だったのだと思います。ふわっとして掴みどころのない描写だったのは、そのためかと納得しました。

まとめ

読み始めた時に薄っすら描いた自分の想像とは違う展開と結果の作品で、自分の浅はかさが恥ずかしくなりました。
金が人生に与える影響について、人が人に与える影響について、人の営みについて考え、その重さや暗さの中に希望を見つけて生きていく、そのヒントをくれる作品でした。

Amazon Audibleでも聴くことができます

私はこの作品はAmazon Audibleで聴きました。分量的にはとても多いのですが、作品が面白いので家事をする間、移動する間、隙間時間を見つけては聴いていました。
本の価格が上がっている昨今、定額で何冊分も読書出来るなんて、私にはとても嬉しいサービスです。

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