読んだきっかけ
湊かなえさん、大好きなんです。映画も気になりますが、Audibleにあったので先に聴きました。
ざっくりどんな話?
自殺未遂で発見された娘。母親と娘の告白から見えてくる家族の関係。娘は何故自殺に至ったのか。
気持ちがすれ違う母娘
主人公のお母さん、母性が全然ないんです。娘の気持ちの想像も出来ない、いわゆる毒親です。
ただ、毒親と言っても分かりやすく虐待をしているわけではなくて、娘を持ったものの母親になりきれない女性です。
対して娘は母親に愛されたいし、母親を守ろうと必死に努力しますが本人には伝わらない。
母性は備わるもの?
もう、永遠のテーマですよね。母性。「母親全員に母性があると思うなよ!」と言いたい。
自分の子が幼いうちは、本当に何度も悩んで落ち込みました。
世の中の”母とはこうあるもの”に負けそうになるとしんどいです。このお母さんは、自分の中の”母とはこうあるもの”に対して忠実ですが、娘には目を向けていない。向けられない。
母性とはお母さんらしく振舞うことではなくて、子供の気持ちに寄り添える性質なのかな、と思いました。ということは、男性にも当てはまることで、男だから母性とは無関係とは言い切れないですね。
相手が子供だから母性という言葉になるけれど、相手が子供ではなく友人だったり、夫や妻なら、思いやりという言葉になるのでしょうか。
広辞苑には母性ってなんて書いてあるのでしょう。
女性が母として持っている性質 または母たるもの
広辞苑(2018・第 7 版)
だそうです。
母って何よ。
母とか母たるものとか、ぼんやりし過ぎて全然分かりません。もう母という字を見過ぎてイチゴに見えてきました。笑
子供を産んだからって、すぐに母親になんてなれません。母って何?って思いながら試行錯誤の連続です。
※ここから下、ネタバレ要素を少し含みますので、ご了承ください。
家族の形
家族という集合体ではあるものの、人間だから相性があると思うのです。
この母娘はそもそも相性が良くなくて、お互いの気持ちが伝わりきらない。私は読んでいて娘の方が母性を持つ女性だと思いました。
母親は誰かに褒められたくて、自分が愛されたくて仕方ないタイプ。
母と娘の立場が逆ならきっと上手くいくし、言葉できちんとお互いの思いを伝えられたら関係性が全然変わるのでしょう。
無口な父親も登場しますが、母娘の架け橋にはなれない上に、夫としても頼りないし、後半に出てくる行動は残念でした。
火事の現場での行動も夫の本質を表しているのだと思います。
リルケの詩を愛し、絵を描くことが趣味で学生運動もしていた人なら、情熱的で情緒もあるはずなのに全部がスタイルだったの?とガッカリしてしまいます。それは彼の育った環境のせいなのでしょうか?
家族と向き合えない、こういうおじさん現実にもいるよなと思わせてしまうリアルさが切ないです。
母親が求めたもの
とことん意地悪する義母と同居することになりますが、義母と母親の関係がはたから見ると歯がゆい。
実母との関係のような、理想の母娘関係を再構築しようと努力していたのかと思いますが、娘の立場は?とモヤモヤします。
義妹も二人出てきて、母親の不幸な感じが昔の昼ドラ感満載でした。笑
後に湊かなえさんは大映ドラマが大好きだったと知り、納得しました。
義母と義妹の場面はそのまま受け止めるとかなりキツイですが、昼ドラや大映ドラマだと割り切って読めば別の楽しみ方が出来ます。
ただ、一定の年齢層にしかできないスキルになりますが。笑
ラストは
これも読む人によって受け取り方は千差万別だろうなと思います。
人間の性質は変わることがないから周りが合わせるしかないということなのかと思いました。
母親は義母にひたすら合わせて生きたし、母親には娘と父親が合わせている。
性質と性質のぶつかり合いだから、相性が大事なんですね。
我慢し過ぎて爆発する前に、話し合いを持たねば。自分に言ってます。笑
湊かなえさんの小説はストレス発散
この記事を書くにあたり、湊かなえさんのインタビュー記事を読みました。ユーモアのあるとても素敵な女性で、作品から想像する先入観とは全然違って驚きました。
記事の中にありましたが、妬みや怒りの感情は誰にでもあるもので、小説を読むことでその気持ちをどうやれば小さくできるか考えるきっかけになれば嬉しいと話されていました。
私が湊かなえさんの作品を好きな理由は、まさにその部分だと思います。
作品の中で出てくるドロドロした感情に共感し、現実から逃避してストレスが発散されています。
しっかり重めの作品ですが、家族という人間模様にモヤモヤ、イライラして発散されました。
映画も観たいと思います。映像でドロドロはどう表現されているでしょうか?笑
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