傲慢と善良 辻村深月

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ざっくりどんな話?

婚活で知り合い、婚約した男女二人を巡るお話です。結婚を間近に、婚約者の坂庭真実(まみ)が行方不明になり、真実の行方を捜す西澤架(かける)。捜す間に真実の過去や、自分の知らない真実について知ることになる。

ジャンルはミステリーとされていますが。

辻村深月さんの作品を読みたいと思って読み始めたので、あまりジャンルとか気にしていませんでした。読んでいくうちに”あれ?これはミステリーなのか?”と感じましたが、ミステリーという括りでは軽すぎる印象です。しっかり読み応えがあり、婚活、恋愛、男女の感覚の差、世代間のズレ、考えさせられること満載で、一口にミステリーと分類するのはもったいない作品です。

動きが少なくてエッセイ的要素も。

この作品はあまり動きがなくて、前半は架がどこかに移動して誰かと話すと、ひたすらに架の思考が始まるという繰り返しでした。考えて考えて結果を導き出すという感じで、時々辻村深月さんのエッセイを読んでいるような気分でした。婚活の現状については驚くことも多くてリサーチ力に感心したり、辻村深月さんの鋭い視点に、ニヤニヤしながら読んでしまいました。笑
”善良は思考停止”というパンチライン、凄いです。思い当たる人が何人か浮かんできて、辻村深月さんは冷静に人間観察をしている恐ろしい人だと思いました。作家って怖い!

読みどころ

都会育ちで恋愛経験が豊富な架と、地方出身で過保護に育てられた真実が結婚に向かうのか、破綻するのか、果たして結婚が幸せなのか、ずっと考えながら読みました。
人を好きになるってどういうこと?というテーマもあるし、女子の独特な意地悪とか人間関係の面白さもあります。
私はこの本のターゲット層からは外れた年齢になりますが、ド真ん中のこれから結婚を考えている方にはなかなか厳しい事実が書かれた作品なのでは?と思います。
結構辛口だな~と思いながら読みました。
理想の結婚相手とは?自分は相手にとってどうなの?等の自問自答。
自分の中にある”傲慢”と向き合わされる作品です。悶絶しながらお楽しみ下さい。笑

Audibleで鑑賞しました

Audibleで読んだ(聴いた)のですが、最新の小説を選ぶことが出来て、私は頻繁に利用しています。
編み物や、家事をしながら聴くことができるのでお勧めです。

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「ダサいから無理」→共感しかない!

凄く残酷だけど真実だなと思った事が、”いくら高学歴で性格が良くても、服のセンスがダサくて無理”というエピソード。こう書くと身も蓋もない感じですが、要は価値観の一致が大事だよねという事なのだと思います。洋服なんて気にしないという二人が結婚するなら問題ないわけで、どこに自分の価値観の重きを置くか、そこが一致するのか、という事を表現しているのだと思いました。

条件だけで見る親世代

一方で親世代は子供の結婚相手の条件だけを見て判断するのは当然の心理だとは思います。が、結婚する当人は条件だけで相手を見ることができないのもまた当然だと思います。
人を好きになるのって理屈ではなくて、感覚が合う合わないが最も大きいのではないかなと私は思います。その感覚というのが先述の洋服の下りで表現されていたり、様々な部分で共感する部分がある作品でした。

”ピンとくる相手”を探し続けてしまう架

架は婚活する相手に恋愛と同じ様に”ピンとくる相手”を探し続けますが、なかなか見つからなくて踏み切れません。
結婚を意識せずに恋愛している間は、それこそ感覚で人を好きになれた架ですが、結婚を意識して相手を見始めた途端、”果たして死ぬまで添い遂げるのにこの相手でいいのだろうか?”と迷いが生じます。
架が”結婚は恋愛の先にあるもの”と思っていて、条件で相手を見ることができないからではないでしょうか?

条件って何?

じゃあ条件って何?ということですよね。結婚相手に何を求めるのでしょうか?
そもそも何で結婚したいのか?架にとってはそこが大きな問題で、真実を探しながらその答えも探します。既婚者の私も、結婚に一番必要な事って何だろう?と改めて考えました。

私なりの答えは、お互いが協力できる相手であることなんだと思います。
その時のお互いの仕事や人生を尊重しながら、家事や子育てのバランスを上手く取れる相手と結婚出来たら最高だと思います。
それを見極めるのって難しいと思いますが、要は”思いやり”の一言に尽きます。相手の立場になって考えられる人。私にとって、条件を一つに絞れと言われたら、そう答えるかもと考えました。

真実の成長

一方で、真実は架と出会った時から結婚する気しかないのに、煮え切らない架の心を動かすためにどんどん成長します。
このあたりは女性特有の強さだなと思いました。
過保護で、従順に親の言う事を聞いて育った真実が架と結婚するために大芝居を打ち、結果自分の意志で歩むようになる。

架目線の前半と、真実目線の後半。
ミステリーとしても面白いですし、文学、エッセイとしても読めるような幅広く満足のいく作品だと思います。
婚活、恋愛、結婚について悩みや迷いのある人にお薦めします。


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