金原ひとみさんってどんな人?
2003年に、二十歳で「蛇にピアス」で芥川賞を受賞。その他の作品でも谷崎潤一郎賞、織田作之助賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞など、受賞歴多数です。
小学校4年生の頃から不登校になって、高校は半年で退学。中学生の頃にはリストカット、20代には摂食障害を繰り返し、集団生活に馴染めない生活を送っていたそうです。
「ナチュラルボーンチキン」は私にとって初めての金原ひとみさんの作品でしたが、生きづらさを感じた人でしか書けない作品だと思うので、経歴を読んで納得しました。
読書をするということは、作家の人生を通して感じた人生観をおすそ分けして貰える得難い体験だと思っています。命を懸けて文章を書いている人なのだと感じましたし、「金原ひとみさん、素晴らしい作品を有難うございました。」と素直に思いました。
ざっくりどんな話?
出版社の労務課勤務、浜野文乃(はまのあやの)は、45歳一人暮らし、あらゆる欲望を捨て静かなルーティン生活に満足していますが、足のケガを理由に出社しない編集部の平木直理(ひらきなおり)の家へ様子を見に行くことを命じられます。
平木直理との出会いがきっかけで、止まっていた浜野文乃の時間が動き出します。
Audibleのオリジナル作品です。
「ナチュラルボーンチキン」は「オーディオファースト作品」と言って、Audible用に書き下ろした作品なので、一定の期間が過ぎるまではAudibleでしか聴くことが出来ない作品です。
Audibleはナレーションに有名俳優さんや声優さんが起用されていて、とても楽しく聴くことが出来ます。
「ナチュラルボーンチキン」は声優の日笠 陽子さんのナレーションで、声に説得力がありました。私はあまり声優さんに詳しくないのですが、サマータイムレンダの南方ひづる役だと知りちょっと興奮しました。笑
上品で冷静な声でコミカルな設定が繰り出されるギャップが面白過ぎて、あっという間に聴き終わってしまいました。
言葉の選択が秀逸
先ず感じたのは言葉の使い方が巧みで、文章でしか表現できない面白さに感服しました。言葉をエンターテインメントに昇華できる数少ない作家さんだと思います。語彙が豊富で、もう凄いです。
前半は、浜野文乃と平木直理の性格のコントラストが面白く、声を出して笑って楽しみました。
後半は、浜野文乃が何故無欲な生活をするに至ったのか、45歳女性の悩みや葛藤が描かれて、最後は気づけば泣いていました。
40代前後の女性に響くことばかりです
家族、仕事、結婚、出産、老化の悩み・・・と書くとありがちに思えるかもしれませんが、人と関わるものは、相手との関係が問題に変えてしまうのだなと思います。
結婚は、結婚相手だけではなくて義父母との関係も関わってくるし、自分が育った家庭環境も影響します。
仕事は何よりも敵はおじさんです!常々思っていた、男性たちのおじさん化現象にこの作品では言及してくれていてスッキリしました。笑
出産に関しては不妊治療に触れていましたが、同じような経験をされた方は沢山いるのでは?と想像しながら聴いて、本当に辛くて泣きました。
人との距離感
金原ひとみさんが提案する、人との距離感は私には最高でした。
主人公・浜野文乃の言う、誰かと付き合うこと、結婚するプロセスで生じる人間関係はマジで面倒くさいことだらけだと実感している同年代の女性がどれだけいることか。
若い世代の平木直理ちゃんが言ってることも合理的で、気持ちの良いものでした。おじさんは怒りそうですけど。笑
そして、みんなで楽しくお酒を飲んで、美味しいものを食べる飯テロ要素も盛り沢山でした。他人と楽しくご飯を食べられる距離感って、本当に大切でかけがえのないものなんだよなと思いながら、出てくるメニューに私もお酒を飲みたくなるのでした。笑
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